発売当時はそりゃもう夢中になって読み漁っていたSLUMDUNK。主人公はいわずもながの桜木花道なのだが、映画『THE FIRST SLAM DUNK』では宮城リョータの話がメインとなっている。宮城リョータといえば、身長168㎝のバスケ選手にしてはかなり小柄なポイントガード。

 

個人的にキャストの中で華を持たせたいのは主人公の桜木花道なんだけど、誰に一番感情移入するかといえば宮城リョータ。自分も小柄であり今までハンデを感じることもあり、そんなときになんとなくふわっと浮かんでくるリョータ。普段は意識することもなく過ごしているけど、体格差を物ともせずカットインしていくリョータの姿はどこか頭の片隅にあって、たぶん知らないうちにずいぶんと励まされていたんだと思う。

 

原作者・井上雄彦氏が監督をされているということもあって、オープニングの演出からして井上雄彦ワールド全開。二次元だからこそできるアングルの迫力、張りつめた音の静寂、選手達の息遣いや体中から噴き出している汗。二次元だからこそでありながら、二次元ではなく透明人間になってその場を盗み見しているかのような臨場感を味わっている不思議。試合の展開も結果もわかっているのに見入ってしまった。描写の中で緻密に描かれているところとそうでないところの緩急がはっきりしていのが印象的だった。

 

キャストにはキャストのそれぞれ歩んできた人生があり、リョータや花道だけではなく他のメンバーのバックグラウンドもちらりと垣間見せながらそれぞれに見せ場がある。描かれていないだけで裏設定はまだまだあるだろうから、またどこかでSECOND、THIRDと続いてくれればと密かに期待している。

 

あと波のディテールや光の透け感など、海の描写の美しさに引き込まれた。

 

下手糞の上級者への道のりは己が下手さを知りて一歩目 安西光義