記念すべき初の読書日記は、大好きなウッチャンの小説です。

 

隔週で発行される情報雑誌「アントニー」の取材を受ける1人の男性。東京オリンピックが開催された1964年生まれの52歳・秋田泉一。彼がこの物語の主人公です。

 

小学生の時、かけっこで一等賞を獲得したときの称賛が忘れられず、どうにかしてあのときの栄光を掴みとろうと、何度も何度も挫折しながらそれでも立ち上がり、孤軍奮闘していく不器用な男の物語。

 

この小説には、いろんな仕掛けが随所にちりばめられていて、その点と点が線となっていくごとに感情を揺さぶられ、読み終わったときには何度も何度も読み返したくなります。

 

さすがにコントや映画の脚本を何本も書いてきただけのことはあって、ただ「金メダル」を目指すだけの物語で終わらせないところに、ウッチャンのすごさを感じました。

 

これまでいろんな小説を読んできましたけど、物語としてここまで完成された作品はなかなかお目にかかれないのでは?と、素直に思いました。いや、ホントにそれくらい、計算されていてよく出来ています。

 

作中やあとがきでは、東日本大震災やウッチャンの故郷を襲った熊本地震のことについても少し触れられています。

 

何度も何度も悔し涙を流しながら、その度に何度も何度も立ち上がる泉一。そこに込められた芯の通った強いメッセージ性がダイレクトにズバッと伝わって心に響きます。

 

結果よりも過程が大事だとよく言うけど、失敗を失敗で終わらせるかどうかは結局は本人の持っていきかた次第。信念を持って貫いたことは、どんな形であれ実を結ぶものなのだと励まされました。

 

そのときの時代背景とともに、出来事やヒット曲なんかもクローズアップされているのでノスタルジックな想いにふけりながら一気に読みました。思いがけない有名人の名前も出てきたりして、遊び心も満載です。