夏の夜空を眺めれば、まずはわかりやすい夏の大三角形と蠍座を見つけるのですが、蠍座のちょうど心臓部に赤みがかった神秘的な星があります。「サソリの心臓」とも呼ばれる赤色超巨星のアンタレスです。
大地女神・ガイアの遣いとしてオリオンを刺し殺したサソリ。アンタレスと同じ赤色超巨星のペテルギウスを有するオリオン座は、そんなサソリから逃げるように姿を見せなくなります。サソリは使命を越えた恋慕によって、天に上げられてもなおオリオンを追っているのでしょうか。サソリの真意はわかりませんが、もしかしたらマイペースにただそこにいるだけなのかもしれませんね。
「会えぬものばかり愛した眼球」の先にある幻想、一縷の希望を見出そうと縋りつきたくなるやるせなさ。「終のすみかであれ」とアンタレスに願いを託すのは、そのやるせなさを痛いほどよく知るからなのでしょうね。
今は雲に隠れているアンタレスですが、先ほどまで月明かりに消え入りそうながらもその姿を見せてくれていました。アンタレスを見つめる私の眼球の先にある幻想、一縷の希望を優しく受け止めながら。