直木賞作家、朱川湊人氏の作品。

 

本のタイトル通り、主人公のトモローさんは主夫をしています。

 

主夫となったワケは、勤めていた会社が突然の倒産してしまったから。食い扶持がなくなり途方にくれていたところ、これならいっそ自分と結婚して小説家になる夢を追いかけてみたら?と、インテリアデザイナーとしてバリバリ働いているカノジョに提案されたのです。戸惑いつつもその気になったトモローさんは、こうして主夫となりました。

 

かわいい子宝にも恵まれ、主夫として家事に育児に奮闘する“チーちゃんパパ”ことトモローさん。ですが、イクメンと最初は微笑ましく接してくれていた周りの人たちも、働いていないことで徐々に不審がられしだいに風当りが強くなっていくのを肌で感じる日々。

 

孤立していく中でせっかく頼りになるママ友ができたと喜んでいたのもつかの間で妙な噂を立てられてしまったり、男性が主だって育児をすることへの見えない壁や思った以上に主夫に対する偏見は根強いということを思い知らされることになります。

 

夫婦で話し合い、お互い納得したうえで、協力しあいながら家庭を築いているトモロー夫妻は、私からすれば至極真っ当な夫婦だと思うのですけどね。トモローさんの育児日記という面もありますが、それよりも育児を通しての社会との関わりについて掘り下げている作品です。

 

こちらのインタビュー記事によると、自身も主夫をしながら育児をしていたそうで、そのときの経験や感じていたことが多分に反映されているとのこと。だからなのか、トモローさんの心情もそうだけど、娘のチーコちゃんをはじめ彼を取り巻く人々の反応の描写とか生々しさを感じる部分がいくつもありました。

 

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進路、結婚、就職・・・離婚。人生の岐路はいろいろあります。私は、基本的に自分以外の誰かの生き方について口を出すのはおこがましいことだと思っています。おこがましいというか、とても畏れ多いことだと思うのです。こういう選択肢もあるよと提供することはできても、こうしろああしろと軽々しく口にできないししてはけいない、人生というのはそれくらい重みのあるものだというのが私の考え方です。

 

でも、だからこそ、そこに自分以外の誰かを巻き込むとなると話は少々違ってきます。特に、子どもが関わってくるとなると一筋縄ではいかなくなりますよね。親の人生はそのまま子どもの人生に直結してくるので、そこは難しいところです。

 

トモローさんも、自分が主夫をしていることで娘にどんな影響を及ぼすことになるのかを気にしています。トモローさん自身、息子として親の選択によって影を落とされた・・・親の真意はともかく少なくとも本人はそう感じているので尚更です。

 

トモローさんの両親は離婚しています。家を出て行った母親に対して、自分よりも別のものを選択をした、自分といることはそのことよりも重要ではなかったとトモローさんは捉えている様子。その部分の記述が深く印象に残りました。

 

 

生きていれば、親だとか配偶者とか自分以外の誰かの人生に否応なしに巻き込まれるものだし、そうやって生かされている部分もあったりします。そこをどう折り合いをつけるかというのは、生きているうちに誰しも通るものだし、最も難しい課題なのかもしれませんね。

 

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最後に・・・。

「主夫」の何が悪い!!

 

当人同士が納得しているのなら、全然アリだと思います!!

では、また~。