雨降れば色去りやすき花桜薄き心も我思はなくに 紀貫之
雨が降れば色が抜け去ってしまう桜花みたいな、そのような薄い心で私はあなたを想っているのではないのです。

 

雨に打たれて色褪せてしまう桜花を見ると、言葉にも満たない意識的な部分で、そんな生半可な気持ちで想っているのではないという訴えみたいなものが反射的に浮かんできます。

 

私は、忘れっぽいし覚えることも苦手。だからあれもこれも暗記していたり、細部までいろいろ記憶しているわけではないんだけど、そういえばこんな歌があったなと潜在意識の中で眠っていたものがふんわりと浮かび上がって情緒的な気分にさせてくれる瞬間に出会うと、短歌やっていて良かったなと思うんです。

 

響きは美しいけど、花の色を奪って散らす桜雨。降れば少し物悲しい気分にもなりますが、そこにほんのりと色を足してくれたのがこの一首です。