恋ひ恋ひて逢へる時だに愛しき言尽してよ長くと思はば 大伴坂上郎女
恋焦がれようやく逢えたときぐらいはせめて愛の言葉をかけてください。長く関係を続けようと思うのなら。
3月は別れの季節。この春から進学や転勤などで恋人や伴侶と遠距離になってしまうという方もいれば、その真っ只中という方もいるかと思います。今はLINEやZOOMなどで連絡を取り合うこともできる便利な時代とはいえ、現代でも大いに共感するところではないでしょうか。
万葉集に収録されている何ともロマンティックな恋歌ですが、大伴宿祢駿河麻呂が大伴坂上郎女の娘 (坂上二嬢)に想いを寄せて和歌を送った際、その返歌として大伴坂上郎女が送ったものだとされています。娘を大切にしてあげてちょうだいという母心が届いたのか、大伴駿河麻呂はその後めでたく坂上二嬢と婚約したという説も。
ますらをの思ひわびつつ度まねく嘆く嘆きを負はぬものかも 大伴宿祢駿河麻呂
立派な男となった私が思い余って嘆いているのです。その嘆きに貴女は気づくことはないのでしょうか。
心には忘るる日なく思へども人の言こそ繁き君にあれ 大伴坂上郎女
心から忘れる日などなくお慕いしていますが、人の噂が絶えない貴方のことですので。