映画好きをとことん貫いた彼らのようにね。

 

原田マハさんの作品。映画好きの方には、ぜひとも読んでいただきたい一冊。

 

主人公・円山歩は、大手開発会社のシネコン設立部門の元課長。若くして出世したことへの妬みからか、根も葉もない噂を立てられ、居場所をなくし、エリートの道を捨て退職した歩。

歩を悩ませているはそれだけではありません。無類の映画好きであり、どうしようもないギャンブル狂で借金まみれの父親・“ゴウ”こと円山郷直の存在です。父親に翻弄され、再就職のアテもない日々・・・。

 

「キネマの神様」は、そんな歩と彼女を取り巻く人々に運命的な出会いをもたらし、数々の奇跡を起こしていく物語。

 

あることがきっかけで、老舗の映画雑誌社・映友社に再就職することになった歩。そして、ひょんなことから映友社のWEB上で映画評論をすることになったゴウ。その映画評論に、圧倒的な知識と表現力で論破してきた“ローズ・バット“なる人物。

 

国境を越えた“ゴウ” VS “ローズ・バット”の絶妙なやりとりがはじまってから物語は俄然面白くなり、不思議な臨場感で一気に引き込まれ、それこそ往年の名画を観ているようでした。

 

***

 

「何事もほどほどに・・・」がモットーなのですが、「過ぎたるは猶(なお)及ばざるが如し」のことわざ通り、何事も過ぎればロクなことがないと思っているからです。でもその一方で、間違った方向に行かなければ、好きな気持ちはとことん貫いていった方が道は開けるとも思っています。

 

それぞれ傷を負いながらも、映画をこよなく愛し、映画好きをとことん貫いた人々の物語。

少しだけ・・・自分の心の声には、素直に耳を傾けてみようかな。そう思えた本でした。物語に出てくる「ニューシネマパラダイス」は、私も大好きな映画です。