夏真っ只中。毎日、毎日暑いですね。この厳しい暑さに、少しでも「涼」を呼びたい!! 「涼」を呼ぶものはいろいろあるけど、その中のひとつが「怪談」
・・・というわけで、今回は「怪談短歌入門」という本の中から、印象に残った短歌をいくつか引いてみたいと思います。
本書は、2012年と2013年に開催された「第一回・第二回twitter怪談短歌コンテスト」の入賞作と、選者である東直子さん、佐藤弓生さん、石川美南さんの選評などが収録された一冊です。
悪夢から目覚めてママに泣きつけばねんねんころりあたまがころり 中家菜津子
悪夢から目が覚めて、ママを見つけてホッとして泣きついて・・・。ママが優しくヨシヨシしながらねんねんころりと口ずさんでくれて、安心しきっているところへ「あたまがころり」・・・子供の立場からしたらトラウマになっちゃう怖さ。
厠から仏間にかけてぴちゃぴちょとのたうつ金魚の一列縦隊 立花腑楽
「厠」「仏間」「ぴちゃぴちょ」「のたうつ」「一列縦隊」・・・少し不気味でぬめっとしたワード選びが絶妙で、醸し出す雰囲気がいかにも怪談っぽくて好きです。「ぴちゃぴちゃ」でも「ぴちょぴちょ」でもなく「ぴちゃぴちょ」なのが、のたうつ金魚の様子を的確に描写しています。
あやとりの指絡みあう 押入れに 誰にも言えぬ友だちはいて 堀 まり彗
「押入れ」「友達」で、ドラえもんを思い浮かべたのは私だけかな? ドラえもんじゃなくとも、例えば犬とか猫を放っておけずに拾ってきて、家族に内緒で飼っているとか。・・・いやいや、「誰にも言えぬ友だち」が生身の人間だということは、「あやとりの指絡み合う」と最初に教えてくれています。だからこその怪談。
真っ白なうどんかき分け叫びます中にあの子がいるはずなのよ 鮫漫坊
すごく奇妙な光景なのだけど、鶏肉などとある具材を擬人化していると考えればすっと腑に落ちる光景のような気もします。実際にそうかどうかはともかくとして、そんな風に考えると字面通りに「あの子がいるはずなのよ」と必死にうどんをかき回す猟奇な不気味さというよりは、表現の仕方ひとつでこういうテイストにもなりえるんだなぁと勉強になった一首です。
夜な夜なに眼鏡のアイツが誘い来る野球しようぜおまえボールな 無樂
行動がジャイアンっぽいけど、誘ってくるのがのび太くんを思わせる「眼鏡のアイツ」で、立場が逆になっているところが“ミソ”ですね。しかも「おまえボールな」と畳みかけているところが巧妙です。
「宝くじ」「地獄」「くちばし?」「しゃれこうべ」「・・・ベンチ・・・」「血」「・・・・・ち、千葉」「ばらばら死体」 桔梗
2人はしりとりをしているわけだけど、一方はなぜかホラーまがいの言葉ばかり選んでくる不可思議。会話の羅列だけで成立させながら、相手方の困惑ぶりが手に取るように伝わってきます。