【今日の短歌】もういやだ死にたい そしてほとぼりが冷めたあたりで生き返りたい　(岡野大嗣)

感情にまかせて「もういやだ死にたい」と口走るその気持ちに嘘はなくても、心の底からそう思って口にしたとしても、それがその人の本意なのかといえば必ずしもそうとは限りません。「死にたい」だけではなく、例えば「嫌い」だったり。

「死にたい」が心の底からの気持ちであっても決して本意ではない、そのあたりの複雑な心情が「ほとぼりが冷めたあたりで生き返りたい」で見事に描写されています。

「死にたい」と敢えて口にすることは滅多にないけど、「ノーテンキ」だの「悩みなさそう」とか言われる私でも、そりゃ生きていれば「もういやだ死にたい」と思うことはあります。かといって、本当の意味で死を望んだことは一度もありません。

ていうか、あんまり軽々しいことは言えないんですけど、死にたいから死を選ぶ人なんていないんじゃないかな。死にたいから死ぬのではなくて、その人なりの尊厳や意志を貫こうとしたとか、その人にとって現世で生きることを諦めざるを得なかったとかそういうことだと私は思うんです。

･･･そして。ほとぼりが冷めたあたりで生き返ることができればいいけど、残念ながら死んでしまったらそれはできない･･･それだけは確か。

いずれにしろ、その人の言動には必ずその人なりの事情や理論があるはずだから、そこを汲み取ろうとせずに言動を言動のまま受け取りすぎるのは危険なことなのかもしれません。

自戒を込めて。