久々の読書日記です。

 

今回は、ブロガーで作家である、はあちゅうさんの新書。はあちゅうさんといえば、AV男優のしみけんさんとの事実婚で大きな話題になりました。そのしみけんさんとの結婚生活をイラストで綴った「旦那観察日記」がついに書籍化されるということで、ただいま予約受付中。

 

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さて、本書のあらすじは、Twitterの「裏アカ」に登場する人物たちの人間模様を描いたものです。主な登場人物は、人妻の美香 (ユカ)、圭太(鉄平)、ナオ(工藤直人)、暇な医大生(裕二)、ねね@童貞ハントFカップ(愛)の5人。

 

無法地帯の架空の世界で、虚構を演じながら欲望をむき出しにしていく裏アカの住人たち。個人情報を明かす必要がない故によほどのことがなければ“表”への影響を及ぼさない、何でもアリの“書き捨て”ができてしまう「裏アカ」。

 

表立っては言えない愚痴や虚栄やあんなことやこんなことの裏で、それぞれが抱えている現実社会へのいいようのないやりきれなさと孤独。インターネットに精通するはあちゅうさんらしく、プロフィール、書き込みの内容や会うまでのメッセージのやり取り、周囲の反応などなど細部にわたってものすごくリアリティがあります。

 

心理描写が巧みだし、とても読みやすい文体でサクサクと読めました。面白かったです。

 

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物語に出てくる「圭太」はナンパ師という設定で、「ネトナン (ネットでのナンパ)」「ストナン (ストリートナンパ)」「即 (即セックス)」「バンゲ(番号ゲット)」「顔刺し」(顔だけで惚れさせる)など、頻繁に出てくるナンパ用語の解説には、思わずほぉ~。

 

「犬イン」・・・これ、何のことだかわかりますか? 「犬」とは渋谷のこと。つまり正解は「渋谷にいるよ」ってこと。・・・あぁ、なるほどハチ公ってわけね。ちなみに「獅子」が新宿、「梟(ふくろう)」が池袋、「丘」が六本木なのだとか。

 

セクハラ被害を受けたとして「#Me Too」運動で声を上げていたはあちゅうさんが、女性とヤリまくっているナンパ師という視点で物語を書いているというのが不思議な気がしましたが、読んでいくうちにはあちゅうさんだからこそ書けたのかなという気もしてきました。

 

 

あと「ナオ」はそれまでは全く冴えなかったのに、Twitterにあげた猫の絵がインフルエンサーにリツイートされたことがきっかけで一躍時の人に・・・。有名になった彼はテレビに出るようにもなるんですけど、彼がそこで見たもの感じたものなんかは、はあちゅうさんの実体験そのものなのかもしれないなと思ったりして。

 

他にも、キャラクターを通じて代弁させているのかなと感じられるところも多々あって、だからこそのリアリティーなのかなと。

 

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誰だってひとつの人格だけで形成されているわけではなく、TPOや相手などによっていろんな顔を使い分けているものです。SNSでの人格もその延長にすぎなくて、もともとあった一面が投影された結果だと私は思っています。例えどんなに別人格を演じていたとしても。

 

「裏アカ」に対して個人的見解を述べるのであれば、あれよ、あれ。あれと一緒。心理構造的に言えば、酔っ払いが自制が効かなくなるのと同じ。お酒が理性というストッパーを外すように、匿名かつ責任を負わなくていいという無法地帯が同じようにストッパーを外すんだろうね。罵詈雑言、エロ・・・、どこに向くかはそれぞれだけど。

 

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これだけのネット社会でAIがますます発達すれば、あらゆる面でSNS上の人格が精査され、その結果がこれまで以上に実生活で影響を及ぼすようになってくるのではないかという記事を読んだことがあります。例えば、進学や就職、婚活や見合い、銀行から融資etc・・・。それらの判断基準に、SNS上での人となりが重要視されるということです。

 

確かにその人となりを短期間で把握しようと思うのなら、これ以上に適した方法はないよなと妙に納得したんですよね。で、遠くない将来、実際にそうなってくるんだろうなと思いました。

 

もちろんこれは予測でしかありませんが、いずれにしても実生活とネット社会との隔たりはよりなくなっていくことは確か。

 

・・・気を付けよっと。