
【エル・ドラード】
それからは句読点なら点でする息継ぎ エル・ドラードへ続く
疑似であることを本気にしないでと立ちのぼらせる剣とつるはし
荒廃はめくるめくもの 群がれる半歩向こうへ香るシナモン
知りすぎてしまったかもね かわせずにスタンダードに運ばれながら
どこかには向かうだろうと仮初めと戯れながら待ち合わせよう
エル・ドラード。黄金郷とも呼ばれる伝説の地です。
そこに何があるのか。何を求めて人は向かうのか。そして、その場所は本当に存在するのか。 この連作をつくるにあたって、そうした問いを正面から描こうとしたわけではありません。 むしろ、何かに惹きつけられ、気づけばその世界へ足を踏み入れている。そんな感覚のほうが近かったように思います。
物語には、人を先へと誘う力があります。 続きを知りたくなる。まだ見ぬものを見たくなる。そこに何かがあると信じて、手を伸ばしたくなる。 もちろん、私たちはそれがつくられた世界であることを知っています。それでも、その世界に触れているあいだは本気で心を動かされることがある。 虚構であることと、心を動かされることは、必ずしも相反しません。 むしろ、その境界を自由に行き来できるからこそ、人は物語に惹かれるのかもしれません。
今回の連作では、黄金郷という目的地を置きながら、その場所そのものよりも、そこへ向かおうとする人のほうに目を向けました。 知ることによって見えてくるものがあります。一方で、知ってしまったからこそ以前と同じようには見られなくなるものもあります。 それでも人は、何かを求めて進んでいく。 その先にあるものが、最初に思い描いていたものと同じかどうかはわかりません。目指していた場所そのものが、歩いているうちに少しずつ姿を変えてしまうこともあると思います。 最後の一首では、到達することよりも、誰かと待ち合わせることを選びました。 確かな目的地を約束するのではなく、仮初めのものと戯れながら、それでも先へ進んでいく。
エル・ドラードは、本当にどこかに存在するのでしょうか。 あるいは、探し求めるものそのものではなく、それに惹かれずにはいられない私たちの側にこそ、その輪郭があるのかもしれません。 どこかには向かうだろうと。 そう思いながら、今日もまた、まだ見ぬ何かの気配を追いかけています。
