最盛期をとうに過ぎたご近所の紫陽花は、色褪せながらゆっくりと確実に枯れてゆきます。花の濃淡を見比べつつ、紫陽花も人間と同じように「あの人は私よりもあんなに若くて綺麗」「あの人老けたなぁ」なんてやっているのかもしれませんね。
色褪せて見向きもされなくなった花が、時にだらしなく枯れてゆくのを見るのは切ないものです。考えてみれば、茶色くくすみながら萎んでいく姿をいつまでも晒し続けなければならないのは、残酷なことなのかもしれません。
歌人であり医師でもある岡井氏。色褪せる紫陽花のように衰えていく患者と向き合いながら、綺麗ごとでは済まされないその過酷さが骨身に染みていたのだろうと察します。
さらに、集団・組織は過密していくほど栄枯盛衰は激しく「濃きは淡きにたぐへつつ」が生まれやすいものです。歌壇や大病院に、その典型のようなイメージを抱く方は少なくないでしょう。岡井氏はその歌壇の重鎮であり、医療現場の第一線で活躍されていたわけですから、「過密花あはれ」がより胸に迫ってきます。
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前衛短歌の第一人者であるあの岡井隆氏が、まさか何度かお世話になったことのある豊橋医療センターの内科医長をされていたとは・・・。訃報を伝える、今朝の新聞で知りました。わが地元・豊橋にゆかりの深い方だったと知り、なおのこと残念に思います。
ご冥福をお祈りします。