【冥き横町】

 

ケバゲバドロン

此岸ではヒュンドラ泣いて丸儲けひまをつぶしてケバゲバドロン

灯されて無漏のようだとタマシイはごった返しておかえりここへ

輪になって踊り明かしているうちにいらないものはいなくなるのに

ちょうちんにもてはやされているうちにどこからかくる焼ける匂いよ

 

冥き横町

散らばった五体のなんの不足なくなんてめでたやなんてめでたや

いかほどの返礼品をぶらさげてかくも目出度きさても目出度き

対岸はいずこにあらずどこぞから聞きつけてくる世古の灯火

あの人のうわさ話をするところ「冥き横町」あちらこちらに

「天・沢・火・雷・風・水・山」地の末広がりはあたるも八卦

 

 

 

この連作を書き始めたときから、祭りの風景と、どこかこの世ではない場所とを重ねてみたいという気持ちがありました。でも、書き終えて並べてみると、思っていた以上に「境界」の話になっていました。

 

前半の「ケバゲバドロン」では、縁日の灯りや人の熱気、夜店から漂う匂い。後半の「冥き横町」では、少しずつ景色が違って見えてきます。

 

祭りと冥界。
生者と死者。
祝祭と弔い。

 

それらをきっぱり分けるのではなく、同じ横町の中に重ねてみました。

 

「おかえりここへ」や「返礼品」、「天・沢・火・雷・風・水・山」など、いくつかの言葉には、自分なりに仕掛けを入れています。作品の中に込めた細かな仕掛けや、連作全体の構造については、noteに少し詳しく書きました。作品を読んだあと、もし気になるところがあれば、そちらも覗いてみてください。

 

この連作を読み終えたあと、さっきまで歩いていた場所は、どちら側だったのだろうと、ふと立ち返る。そんな感覚が、少しでも残っていたなら嬉しく思います。