放送作家・西川司氏の自伝的小説。
かっちゃんは、「なぜ?」が解らないと先へ進めない子供でした。
たとえば「漢数字」・・・一、二、三と、数が増えるごとに線が増えるのはわかるとして、なんでその次は形が変わって「四」になるの?
たとえば「ひらがな」・・・にしかわの「に」は、なんで「に」と書くの?おんなじ「に」なら「ニ」でもいいのに・・・。
そんな調子だから勉強に全くついていけず、もうじき小学2年生になろうという段階で、漢数字どころかひながなもまともに書けず、時計さえも読めないありさま。担任の先生からは、特殊学校のひまわり学級へ入ることを勧められます。
そんなかっちゃんに転機が訪れたのは、転校先で出会った森田勉先生との出会いでした。新しい学校には特殊学校がないため、受け入れが無理なら遠い隣町の養護学校へ通うことになるかっちゃん。そこで、春休みの間“お試し”で森田先生によるマンツーマンの特別訓練を受けることになるのです。
森田先生は、かっちゃんの「なぜ?」にとことん付き合いながら、学ぶ楽しさ面白さ、大切さ、できることの喜びを教えてゆきます。
「何事もコツがあるのさ」
勉強だけではなく、跳び箱だって、キャッチボールだって、逆上がりだってあっと言う間にできるようになっていくかっちゃん。
目で見て、声に出しながら手を使って何回も書く。「頭じゃなくて体で覚えろ」が森田先生流。こうしてかっちゃんは、森田先生のおかげで劇的な成長を遂げることになるのです。
こうだからこうなって・・・だからこうなる・・・というように、物事には必ず理由があります。理屈がわかれば納得できるし、理解もしやすい。もともと、理屈で物を考えるかっちゃんは、納得さえできれば理解は早いということなんでしょうね。
それと森田先生は、かっちゃんのことを本当によく見ているし、知ろうとしているんですよね。どこがどう理解できないのか、できないのはどうしてなのか、どこをどうすればできるようになるのか。当たり前のことなんだけど、その当たり前のことを素直に実践したのが森田先生であり、物事を教えるというのは本来そういうことなんだろうなぁ、きっと。
私も物事を覚えるときは「なぜ」「どうして」となるべく理屈で覚えるようにしてはいるけど、もとからそうだったわけじゃないからその理屈を導き出すのに人一倍時間がかかることもしばしば。(;^_^A 森田先生みたいな先生に出会っていたなら、もう少し変わっていたのかもしれないですね。
家族や親戚からの理不尽な扱いに涙するかっちゃんの悔しさや憤りは、読んでいて胸が痛かったです。