「オレたちバブル入行組」「下町ロケット」などでおなじみの池井戸潤氏の作品。

WOWWOWでは、中村トオルさん主演でドラマ化もされました。2018年にはTOKIOの長瀬智也さん主演で、映画化もされます。

 

この物語はフィクションですが、2012年に実際に起きた三菱自動車製トラックの脱輪事故とリコール隠しがベースとなっています。

 

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先代の父から受け継いだ赤松運送の社長・赤松徳郎は創業始まって以来の窮地に立たされていました。

 

赤松運送が所有するホープ自動車製のトレーラーが脱輪事故を起こし、被害者の女性を死亡させてしまうというとんでもない事態に陥っていたのです。

 

警察が事故調査を依頼したという、販売元のホープ自動車からの結果は整備不良。点検の不備はないにも関わらず一方的に疑われ、警察からは容赦のない執拗な追及。信用を失った赤松運送からは取引先が次々と撤退。メインバンクのポープ銀行からもコンプライアンスを理由に追加融資を受けらず・・・。

 

日に日に追い詰められていく中、それでもなんとかしようと再起をかけて奔走するほど、漠然と抱いていた疑念は確信へと変わっていきます。

 

やっぱり、あの事故は整備不良によるものなんかじゃない!!車両自体に問題があったのだ!!

 

さぁ、ここからが池井戸氏の本領発揮。巨大組織に蔓延る闇に、赤松達はどう立ち向かっていくのか・・・。

 

 

顧客や市民よりも保身を優先し、事なかれ主義で責任逃れに余念のない悪しき体質。現実社会のニュースでもそこらじゅうで垣間見ることができますね。豊洲の問題にしたってそうだし、今で言えば旅行会社「てるみくらぶ」の倒産問題だってそう。

 

コンプライアンスとは何なのか、現実のニュースと重ねながらいろいろと考えさせられました。

 

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それぞれの立場で守るべきものや理想、あるいは欲があって、その思惑が複雑に交錯し絡み合っているのが組織というもの。

 

企業や政治のスキャンダルがらみのニュースを目にするたび思うのは、混沌としたその渦に翻弄され、どこまでが許されてどこからが許されないのか、何が正しくて何が間違っているのか、時としてそれすらもわからなくさせてしまう・・・そういった一面を持っているのが組織というところなのだということです。

 

本書は、ホープグループ側から視点でも描かれており、そういう組織内の感情の揺れも巧みに描写されています。そして胸のすくような啖呵で浄化してくれるのが、池井戸作品の真骨頂。スカッとさせてくれます。