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辻村深月さんの作品。松坂桃李くん主演で映画化もされています。使者(ツナグ)とは、いわばこの世の者とあの世の者との交渉人。
物語の中では、死者に会いたいと思ったとき、使者(ツナグ)の元に依頼をすれば本人に交渉して会わせてわせてくれるという設定になっています。
ただし、死者に会えるチャンスは、生きているうちたった一度だけ。
だから誰に会うのかは慎重にしなければなりませんし、依頼したとしても必ずしも会えるとは限りません。
なぜなら死者にとても、この世の人間と会えるチャンスは一度きりだから。
そもそも依頼がなければ誰とも会えないし、断ったならばもうその依頼人とは二度と会うことはできません。依頼を受ければその先にもっと会いたい人からの依頼がくるかもしれませんが、きたとしても受けることは不可能。かといってその当人からの依頼が来るかどうかはわかりません。だから、死者にとっても難しい選択が迫られるわけです。
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依頼者が死者に会おうとする思惑はそれぞれだけど、両者が会うことでその結末が必ずしも良い方向に向かうわけではありません。会うことによって結果的に救われる例もあれば、決定的に取り返しのつかない事態を招くこともあります。
「知らぬが仏」という言葉がありますが、もしかしたらそこに知らなくてもいい真実が潜んでいて、それがわかることによって重い十字架を背負う・・・あるいは相手に背負わせることになるかもしれず、そんな駆け引きが見え隠れする残酷さも本書の面白さのひとつです。
物語はそれぞれの依頼人、祖母からの使者(ツナグ)を受け継ぐため見習いとして依頼人と面談することになった男子高校生・歩美の視点から構成されています。歩美の視点から依頼人・死者の行動を見つめることによって、両者の心情はより色濃く浮き彫りになります。
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少し余談になりますが・・・。
心臓手術を受けて以来、少し死後のことについて考えるようになりました。というのも、手術があまりにもあっという間に感じたからです。全くの無の世界。
人工心肺を使ったので、それこそ一時的に仮死状態だったのですが手術が終わって起こされるまで本当に何も感じなかったし、何もありませんでした。本当になんにもない無の境地。
えっ?! 何、これ!!
なんていうのか、感覚としてはそれこそ眠ってすぐ起こされたようなそんな感じ。考えてみれば当たり前なのかもしれませんが、理屈ではなくけっこう衝撃的な体験として心に残っています。
それでなんとなく、死後の世界ってこんな感じなのかなと思ったんです。
実際のところはどうだかわかりませんけどね。ただ、行きつく先はこう・・・なのかもしれないという「無」を身をもって体験したことで、あまり物事に悩まなくなったし、ほんの少し肩の力を抜いて生きられるようになりました。
それ以上にもそれ以下にも成り得ないんだとしたら、小さなことにいちいち動揺しても仕方がないというかね。もっとあらゆることに対してドンと大きく構えて自由に生きたほうがいいという気持ちが大きくなったんです。
もちろん、残された人の記憶や、この世に生きた痕跡があるかぎり完全に「無」になるわけではなく、「ツナグ」はそのことを改めて印象づける作品となっています。
生者と死者を“ツナグ”高校生のイケメン、ぜひとも出会ってみたいです。(笑)