蝶々結びは完璧にできても、その蝶はすぐにほどけてしまいます。子供の頃からその度にしゃがみこんで結び直してきたのですが、どんなに固く結んでもまたほどけてしまいます。時が流れてもこの現象は変わらず、ほどけにくい靴紐の結び方をネットで調べて試しても、気が付くとするりとほどけてしまうのです。そんなことが続き、いつしか靴紐を結ぶ靴はほとんど選ばなくなりました。

 

靴紐がほどけるたびに煩わしさを感じていましたが、「蝶を生き返らせる」という視点で捉えられたなら、その瞬間も少しは美しく思えたのかもしれません。蘇った蝶は、束縛から解放されるように何度でも私から飛び立ち、自由を手に入れます。それでもほどけた靴紐を結び直すたびに、心の中で小さな蝶を蘇らせる喜びを感じられたかもしれません。また、靴紐を結ぶ行為は、新たな一歩を踏み出す決意の象徴でもあります。ほどけた靴紐を結び直すたびに、一瞬の静寂と向き合い、その静けさが特別な時間となるのであれば、それもまた悪くないかもしれません。

 

詩的な視点は、単調で繰り返しの多い日々の中にも彩りと深い意味を見出す力を持っています。靴紐を結び直すという何気ない行為を、まるで小さな儀式のように感じることができれば、その瞬間瞬間がもっと豊かで意味深いものになることを教えてくれます。