あっつい、とにかくあっつい。年々厳しさを増す猛暑に「暑い」という言葉がつい口を出てしまい、「おはよう」もそこそこに「暑いね」が挨拶代わりとなってしまうほどです。真夏の猛烈な暑さに対する対処法として、「暑い」と言うことで気持ちを紛らわせようとしているのかもしれませんが、紛れるというよりもそうせざるを得ないというのが正しいのかもしれません。
言葉の力を借りて心の負担を軽減しようとするこの行動はマスキング作用と呼ばれており、痛みや苦しみを言葉に出すことで和らげる効果があるとされています。「暑し暑し」と繰り返し口にすることで気温が下がるわけではないのですが、そのような人間の自然な反応を巧みに利用し、暑さを言葉にすることで心の負担を軽くしようとする普遍的な行動を表現しています。ほんの少しでも暑さを和らげようとする、私たちの日常の一コマを見事に捉えている一首だといえます。
繰り返される「暑し暑し」という言葉は、実際の暑さを感じさせると同時に、言葉の持つ心理的な影響を示しており、多くの共感を呼び起こすそんな力があります。