「未来」の2017年6月号に掲載された、「歯医者で読むアインシュタイン」という連作の一首。
伝記漫画「アインシュタイン」読んで待つ 赤子にアルベルトと名がついた 工藤吉生
歯医者の待合室で治療を待つ間に、伝記漫画「アインシュタイン」を読んでいるという設定。「象はなぜジャンプできないの?」と父に問いかけるような好奇心旺盛な少年が、恋をして失恋し、時には河原でケンカして・・・。
一連の連作に目を通せば、まるで自分がその伝記漫画を読んでいるかのように、アインシュタインの人物像が浮かびあがってきます。
病院の待合室といったら本や雑誌を読むことが多いのですが、そんなときはいろんな感覚が過敏に反応しているような気がします。周囲の状況や言葉に対して。そんな意識はなくても、家の中にいるより神経が高ぶっているからでしょうね。
病院の待合室という、あの場所で読むからこそのあの感覚。また歯医者というのがね。あの消毒液の匂いと相まって、より一層リアルにイメージを引き出させます。
そう、あと病院の待合室で読み始めた本だから、どうしても読みかけで終わってしまうんですよね。ちょっと後ろ髪引かれつつ、行かなきゃと逸りながら本を棚に戻す・・・。そんなところまで実感としてありありと蘇り、とても好きな作品です。
工藤吉生さんの「歯医者で読むアインシュタイン」の全編は、こちらでご覧いただけます。