いむといひて影にあたらぬ今宵しもわれて月みる名や立ちぬらむ 西行
忌むべきものと言われてその光が当たるのさえも避けようとする今宵だけど、無理をしてでもそんな月を見てみたいと思う。悪名の噂が立たなければいいのだ
一昨日は皆既月食でした。古の時代では月影さえも避ける凶兆だった月食も、今では天体ショーとして皆がこぞって写真や動画に収めるなどして楽しむ時代。しかも今回のように皆既月食と惑星食が同時に起こるのは1580年以来で442年ぶり。その時の惑星は土星で、今回と同じ天王星食は弥生時代以来だとか。
というわけで私も、暖かい飲み物片手にしばしボーッと何とも神秘的な赤い月を眺めていました。そのうちキラッと眩い光が差してくると、あぁ月ってこんなに明るかったんだなと改めて認識させられて、その神々しさが希望のようであり頼もしくありました。皆既月食の終わりを告げられた残念な気持ちもあるんだけど、それよりも光を見ることで赤い月が一層際立って美しく思えたように感じます。
月蝕ののちの復円徐々にして待てば開花のごとし夜天に 安永蕗子
西行法師とは世代は違えど同じ時代を生きて面識のあった源頼朝は、月食を避けるために御家人の家に泊まったとも伝えられており、皆既月食を見るというのは当時としてはかなり勇気が要った行動だと思われます。そうまでして見たであろう月食を感想を、西行法師にもぜひ聞いてみたいものです。そこは歌にもどこにも残されていないから謎なんだよね。