昔、「グレ」という名前の猫を飼っていました。知り合いの事務所に迷い込んでいたノラ猫だったのですが、ウチが飼うことになったのです。アメリカンショートヘアと何かのミックスで、色がグレーだったから「グレ」と命名されました。
人間には温厚でおとなしかったのですが、猫界ではなかなかのやんちゃぶりを発揮。体格が大きくて、近所ではいわゆるボス猫だったグレ。しょっちゅうケンカしては怪我が絶えず、病院にもよく連れて行きました。ウチの中ではよくテレビの上にドデーッと乗っかっていた姿を思い出します。
グレが亡くなって数日経ったときのこと。寝ていると、グレがベットの上をトコトコと歩いているそのときと全くおんなじ感触が伝わってきたのです。グレ⁈と思わずハッとして、いやいやそんなはずは・・・と否定しているその間にも感触はまだ続いていて・・・。これやっぱりどう考えてもグレだよなぁとかグルグル考えているうちに、その感触はしなくなりました。
その日以外にも数回同じようなことがありましたが、見ても動いてもいけないような気がして目も開けずにただただじっとしていました。ただの気のせいだったのかもしれませんが、あれはグレからの「さいごのてがみ」だったとそう信じています。
亡くなる直前は、行方がわからなくなっていたグレ。あちこち捜し回っても見つからなくて、途方に暮れていたときに目撃情報が。グレらしき猫がいたというその場所へ駆け付けた妹の話によると、グレらしき猫はその場所で亡くなっていて、もうすでに近所の人の連絡によって市役所に引き取ってもらっていた後だったと聞かされました。
グレの最期に立ち会うことができなかったのもあって、あのときの忘れられない感触とともにグレを思い出すそんな短歌です。