BL短歌って?

 

BL短歌とは、腐女子の皆様がキュンキュンしながら泣いて喜ぶBL(ボーイズ・ラブ)を詠んだ短歌ということになります。

 

BLの魅力につきましては、「まじまじぱーてぃ」というblogを運営する大人気ブロガーのあんちゃさんがこちらの記事でわかりやすく解説されています。あんちゃさんによると

 

  • 「性別」という超えられない壁を超えた恋愛にときめく
  • 両想いになるまでのハードルが高くて切ない
  • 女性が「攻め」を疑似体験できる
  • ムカつくヒロインが出てこない(嫉妬しない)
  • 人の目を気にしない純粋な恋愛に畏敬の念をいだく

 

・・・だそうです。

 

 

いわゆる腐女子というわけではありませんが、BLの漫画もたまには読んだりもしていました。ちなみに好きだったのは、尾崎南さんの絶愛-1989です。※こちらで試し読みできます。

 

 

この漫画に登場するスーパースター南條晃司がリリースしたアルバム(という設定)を友達がダビングしてくれて、当時毎日のように聴いていたのを思い出します。あ~懐かしい!!

 

 

南條さん、イメージ通りというかヤバイぐらいのイケボでめっちゃ歌が上手いです。

 

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では、BL短歌がどういうものか具体的に覗いてみましょう。

 

まずは、「かんたん短歌」の生みの親でもある桝野浩一氏の短歌。

 

殴り合いみたいなキスをしたこともカウントせずに始発で海へ
遠くから大声すぎる鼻歌が近づいてきて絶対おまえ
つなげない手と手の磁場がふるえては上腕筋を太らせていく

「ノーカウント」より。

 

・・・なんていうか、読んでるこっちが思わず赤面してしまうような・・・この萌えキュンがたまらないんでしょうなぁ。・・・いや、わかるよ、わかる。うん。男同士ならではのちょっと汗ばんだ感じや特有の空気感とか。

 

 

 

BL短歌botより。

 

 

詠み手の実体験が反映されていないファンタジー

 

文学研究者の岩川ありささんは、こちらの記事のインタビューの中で「BL短歌は純粋に一人称的な表現でもない」ところが面白い所だと述べられています。

 

岩川: むずかしい話にもなりますが、従来の短歌は、詠み人の「我(われ)」から自由になりきれなかったのではないかと思うんですね。詠み人自身が実際にどんな人で、実人生のなかでどんな経験をしているのかという観点から離れられないところがあったというか。

たとえば、「お父さんが死んだ」というような短歌を詠んだのにお父さんが生きていたというような場合、「これはアリなのか?」という論争になるということもあったと思います。

— なるほど、従来は、「短歌は詠み手本人のリアルな人生経験を反映するもの」という認識が前提としてあったけれども、BL短歌の場合は詠われている内容が詠み手のファンタジーであっても問題ないわけですね。

岩川: そうですね、BL短歌は、萌えの対象にも、詠み手の実人生にも、ワンクッション置いて表現できるジャンルなのだと思います。ボーイズラブの題材になる「彼ら」にたいして、それを見ている「私」が距離を保ちながら没入するというところが違いかな、と。

 

 

自分の作品を振り返ったときに、すべてのエピソードが実体験というわけではありません。ただ、エピソードはフィクションであったとしても、心情的な部分はすべて自分が経験したことに基づいています。短歌は、そこの核となる部分を伝えるための手段のひとつであり、そこは譲れないところだと思っていました。

 

例えば同じ「片思い」であったとしても、異性に対するものと同性に対するものとでは、超えられない性別の壁があるぶん心情的にはおそらく全く別もの。詠み手が同性愛者でないストレートなら、そこの葛藤の部分は妄想をふくらませて詠むしかないわけです。

 

エピソードも心情的な部分もすべて頭の中で組み込まれたファンタジーだからこその視点が面白いというのは目から鱗でした。

 

考えてみれば、第三者の視点にたった物語だと思えば、短歌がフィクションであったとしてもそれはそれで全然アリなのではと、今は思っています。

 

 

 

実体験に基づいたリアルなBL短歌

 

・・・一方で、ファンタジーではなく“リアル”にBLの短歌を詠まれている方もいます。同性愛者であることをカミングアウトされている歌人の鈴掛真さんです。ちなみに鈴掛真さんは、「男性として」男性と恋愛しているとのことです。

 

 

鈴掛真さんのインタビュー記事で、カミングアウトの弊害は何かありましたか?という問いがあったのですが、その答えが以下です。記事の一部を抜粋してみました。

 

鈴掛:仲良かったLGBTの友達との距離ができました。僕と一緒に行動しているとバレちゃうんですよ。やっぱりクローズの人たちはクローズでコミュニティをつくるわけですね。だけど本を出したことによって僕がクローズのコミュニティから出ちゃったわけで。それは全然想定していなかったことだったので、ショックだったし本当に悩みました。

 

LGBTへの理解が深まったとはいえ、現実にはこういう面もあるということですね。

 

どこのサイトだったかな。忘れちゃったけど、BL、BLと騒いでいても二次元のイケメンだからいいのであって、リアルなBLは受け入れがたいという内容の記事が書かれてあったのを見かけたことがあります。彼女はファンタジーをファンタジーとして楽しんでいてリアルのそれとは完全に別物として捉えているわけですね。

 

でもって、同性愛を完全に受け入れているわけではないという本音。そのことに対してどうこう意見を述べるつもりはないですが、ものすごく正直な気持ちなんだろうなぁと思います。

 

表現者がカミングアウトをするということは、世間のそういう目の矢面に立つということで、相当な覚悟が必要だったのでしょうね。

 

ちなみに鈴掛真さんは、こちらのサイトで「ゲイだけど質問ある?」という記事を連載されています。文章がものすごく丁寧で誠実な人柄が伝わります。

 

 

そんな鈴掛真さんの作品で、好きなのはこちら。

 

折りたたみ傘をほんとは持っていたことをないしょにした帰り道
あなたから大事なものを奪い去り最後に残るものを知りたい
あ。・・・今、笑ってくれた。流れ星みたいに君の笑顔を探す

三十一音のラブソングより

 

 

同じく三十一音のラブソングより、こんな官能的な短歌もあります。

 

ああ君はそうして声を出すんだね そうして顔を歪めるんだね

 

 

最後に

 

想像力をフルに働かせてBL短歌に挑戦してみました。

 

 ガッシリと組まれた肩が熱くても飛ばせよジョーク何ごともなく

 

アイツからのスキンシップにドギマギしながらも、動揺を悟られまいと必死に平静を装っているオレ。「ガッシリ」「飛ばせよ」というワードでBL感を演出してみました。

 

では、また~。

 

 

【追記】

同性愛者であることをカミングアウトされた歌手の清貴(KI-YO)さんのこちらの記事をぜひ読んでみてください。LGBTについて思うことについては、改めてちゃんとした形で記事にしたいと思います。

 

「The Only One」大好きな曲です。声がいいのよね。アルバム持ってた!!

 

多様性を認める世の中になるよう願いを込めて作られた曲。「WE OUR ONE」