人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける 紀貫之
訳:人の心はいざ知らず、ふるさとの梅は昔のままに香を放っています
「土佐日記」で知られる紀貫之のこの和歌。これにはこんな逸話があります。
なじみの宿に久しぶりに顔を出したところ、「この宿はずっと昔からあるのに、あなたときたら心変わりしたみたいに来なくなって・・・」と宿の主人にこぼされてしまうんですね。なんていうか、クラブやキャバクラとかの「やだ、久しぶりじゃな~い。あんまり来ないから忘れちゃったかと思ったわよ~」みたいなノリですかね。(ちょっと違うか(^^;))
そこで動じずに機転を利かせるところはさすがは色男。「人の心はさぁどうだか知らないけど・・・」と、梅の花を添えて詠まれたのがこの和歌というわけです。
「人の心はさぁどうだか知らないけど・・・」
そう、ひっそりと幕をおろすことを決意したこの心を知る由もなく梅は香っているのです。