秋の花を問われると、彼岸花は瞬間に脳裏を駆け抜けるもの、水引草や鶏頭はすぐには思いつきません。そうきたかと変化球を投げられたかのような気分になったのちに、秋の微妙な情緒と照らし合わせて「ああ、そうか」と納得させられる、そんな感覚がありました。
花言葉を調べてみると、水引草の花言葉は「慶事」「感謝の気持ち」、鶏頭の花言葉は「情熱」「個性」「勇敢」であり、「やや寂しき」のような物悲しさはありません。けれども、「緋の色のやや寂しき」がこんなにもすっと腑に落ちるのは、秋という独特の静寂がもたらす情感がそうさせているのかもしれません。ちなみに、彼岸花の花言葉は「悲しき思い出」「あきらめ」「独立」「情熱」「再会」「転生」。
秋の緋色は、夏の燃えるような太陽の名残をまといつつも、沈みゆく夕日のようなやや寂しげな雰囲気を漂っています。ひとつひとつが鮮烈でありながら、秋の静けさの中でそれぞれが控えめに存在し、少しずつ季節の終わりを告げているようです。
猛暑と喧騒が過ぎ去り、冬の厳しさが訪れる前の一時は、豊穣の季節でもありますが、どこか終焉の予感も感じられる不思議な季節。そんな秋生まれだからかもしれませんが、豊かさと哀愁が織り交ぜられた秋は、詩情を誘う大好きな季節でもあります。