去年、初めて葛の花を使って酵素ドリンクを作りました。その作り方は非常にシンプルで、水に砂糖と葛の花を加え、常温で放置して発酵を進めるだけです。発酵が進むにつれて、液体は美しいルビー色に変化し、まるでワインのような芳醇な味わいが現れるのです。その独特な風味にすっかり魅了されてしまいました。

 

 

発酵中、酵母が活発に働いている間は、液体の表面に気泡が次々と現れます。しかし、発酵が落ち着いてくると、酵母たちの活動も終息に向かい、「澱」として底に沈殿していくのが見られます。この色彩の変化と沈殿物の動きを眺めながら、自然とこの短歌を存在を思い出し「酵母には死骸とう語があたるか」と考えさせられるのです。

 

水を常温で放置することには、当然のことながら少し不安を感じます。すぐに腐ってしまうのではないかと。しかし、気泡が立ち上って、やがて澱が沈んでいく様子を確認できると、発酵のプロセスが順調に進んでいると安堵します。そして、「腐敗」と「発酵」は表裏一体であることを深く実感します。発酵は一見すると腐敗に近いけど、実際には生命の力によって新たなものを生み出す過程でもあると、腐敗と発酵の境界線を間近で見つめながらそんなことを思います。

 

酵母は生き物なので「死骸」という表現が当てはまるかもしれませんが、役目を終えた後の静かな存在であり、やはり「澱」という言葉がふさわしい気がします。そして「とろとろのとろ」という表現は、酵母がゆっくりと沈殿していく様子そのものを映し出しているようで、まさにこの発酵の過程を表現するのにぴったりだと感じます。