本書の初版が発行されたのが2005年11月。当時は、ネットでもずいぶんと話題になりました。
なぜ今、白石さんなのかといえば、図書館で本書を見かけて懐かしいなぁと手に取ったからなのですが、ネットが普及し炎上やらなんやらどこか閉塞感を感じる今の時代こそ読むべき本なのではないかと感じたので今回取り上げてみました。
生協の白石さんとは・・・。
日本の生活協同組合の職員である。東京農工大学生協に勤務していた際、利用者アンケート用紙「ひとことカード」に書かれた要望や質問に対する、真面目かつウィット溢れる回答で話題となり、『生協の白石さん』のタイトルで書籍も出版された。Wikipediaより
ちなみに現在は、東洋大学白山キャンパスにある白山店店長に就任されています。
真面目かつウィット溢れる白石さんの回答
あのWikipedia先生も、真面目かつウィット溢れると絶賛?! する白石さんの回答。なにはともあれ、学生さんとのやりとりを少しだけ覗いてみましょう。
このように、お笑いの大喜利みたいな“ネタ振り”にも真摯に受け答えする白石さん。
さすがだな、すごいなと、特に印象に残ったのがこちらの回答。
本気かどうかは知る由もありませんが、「死にたい」というかなりシリアスな言葉に対してのこの回答。
非常に賢い方だなと感じるのは、どんな言葉も突き放さずに誠実に受け止めながらも「できること」「できないこと」そして領分というものをきちんとはっきりさせられるところです。
こういう立場上の接し方や対処の仕方に、もどかしさを感じたり、悩んだりすることは案外多いのではないでしょうか?そういったときに白石さんの対応はとても参考になるのではと思います。
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本書には「ひとことカード」をまとめたもののほかに、「白石さんからの言葉」というコーナーがあり、ひとことカードにまつわるエピソードなどが添えられています。その中にこんなことが書かれてありました。
繁盛期の忙しいときに寄せられた、ひとことカードの「豆?」という質問に対して
という回答が浮かんでしまうほど、憤りを感じてしまったというものでした。
そして間もなく「・・・・・・自分こそが『豆』か・・・・・・」と、自らの懐の浅さに気づき自省せざるを得ませんでした。若者の茶目っ気投稿に、なぜこんなにも腹を立ててしまったのか。よくよく投稿された用紙をみると、なぜ日付が03年なの?と、どうでも良いことに気づきもし、だんだんと笑う心境になることができたのです。
そんな白石さんの回答はこちら。
こういう粋で機転の利いた切り返しは、本当に頭の切れる方じゃないとできませんね。
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少し話が逸れますが、先日こんなtweetを見かけました。
たとえば「ルンバは最高!」といえば誰も傷つかないのに「ルンバ使ってないやつはバカ」「投資の考え方がなく、時間の使い方が下手」というの、恐怖のほうが人を動かしやすいからそう言うってのはわかる。
ただ、煽らないで伝えたいことを伝えられる方法は考え続けたいですね。
— けんすう (@kensuu) 2017年7月25日
そう、本当に賢い人というのは、言葉を選ぶということを知っています。同じルンバの良さを伝えるにしても煽ったり、ディスったりしてむやみに炎上させるようなマネはしないものです。
信念を曲げたり、当たり障りのないことばかり言うのとは違います。言い方やアプローチの仕方の問題です。ちょっと想像力を働かせて、やみくもに誰かを焚き付けたり不快にさせることなく行動に導くように言葉を選びます。
とはいえ、中には話の通じないタチの悪い絡み屋というのがいるものですが、「この忙しいのに、なにが『豆』でございましょう」というように、わざわざ被害を拡散させるようなことはしません。
この言葉を選ぶというのは、これだけ情報が氾濫し、様々な意見が飛び交い、誰もが気軽に発信できるこの時代において、かなり重要なスキルなのではないかと思っています。
ACジャパンのCMにあるように、何かとすぐに揚げ足を撮られるような今の時代では尚のことです。
白石さんが支持される理由は、そんな言葉選びの巧みさはもちろんのこと、投げたボールをきちんと受け止めてくれる誠実さが承認欲求を満たしてくれるからだと思うのですが、これってビジネスだったり人間関係を築くうえでも時に必要なことです。
白石さんのウイットに富んだ切り返しは、現代社会においてきっと何かしらのヒントを与えてくれるのではないかと思います。
最後に・・・。
白石さんと学生さん達とのやりとりは、こちらのblogでもご覧いただけます。