「見たまま」「感じたまま」をそのまま差し出しているようで、ただ明るいだけじゃなく、不安や虚無なんかに包まれていた夜だったんじゃないかなと思うんです。
なんとなくつけたテレビに映っていたバラエティ番組。そこに顔をめいっぱい使って笑わせてくるコロッケさんがいて、「誰の真似だかわからないけど、よく動く顔だなぁ」と思いながら、ふと和んでしまう。そこに顔をめいっぱい使って笑わせてくるコロッケさんがいて、「誰の真似だかわからないけど、よく動く顔だなぁ」と思いながら、ふと和んでしまう。沈んでいた気持ちがふとゆるみ、現実の重さからほんの少しだけ距離が取れた、そんな瞬間。
そういう「心のゆるみ」を、この歌はさりげなく掬い取っているように思います。ほんの少しだけ現実から切り離されて、心がゆるむ瞬間というのは、たしかにあるものです。
ただ楽しいだけじゃなくて、ほんの少し現実から目をそらさせてくれる仮の灯りのようなもの。それは何気なく目にしたテレビ番組、ふと流れてくる音楽、道端に咲く花、暮らしのなかに紛れ込んだ何気ない風景、誰かが発したひと言だったりします。私自身、そんな「仮の灯り」にずいぶん助けられて、生きてきた気がしています。
そんな「夜のめでたさ」が、この短歌には確かにあるような気がするのです。