幼少期にバレエを習っていた私にとって、「アラベスク(arabesque)」という言葉は、優美なバレエのポーズを思い浮かべさせます。このポーズは、片足で立ち上がり、もう一方の足を背後に高く伸ばす姿勢であり、バレエの華やかさを体現するうえで欠かせないものです。また、バレエだけでなく、音楽においても旋律が装飾的に展開することを指す言葉として用いられます。しかし、もともと「アラベスク」とは、イスラム美術に見られる装飾的なデザインの一種で、植物の蔓や花、幾何学的な模様が繰り返され、複雑に絡み合った美しさを指します。
最近観た「人類滅亡 -LIFE AFTER PEOPLE-」というチャンネルでは、人類が消え去った後の地球がどのように変化していくのかが描かれています。壮大なビルや橋が自然の力によって脆く崩れ去り、草や木がその隙間を埋めていく様子は、どれほど立派な建造物であっても、形あるものはいつか壊れる運命にあることを実感させます。この「アラベスク」は、華麗で緻密に織り上げられた象徴であり、その美しさもまた例外なく崩れ去る運命にあることを示唆しています。
生命や物の有限性、時間の不可逆性が強調される中で、アラベスクの美しさとともに訪れる崩壊を受け入れようとする心情が浮かび上がります。アラベスクの脆さや儚さを内包した美しさに魅せられ、やがて訪れる崩壊を受け入れながら心に留めようとする。それこそが、アラベスクにおける「美」なのかもしれません。