万葉集特集です。

 

万葉集というと堅苦しいイメージがあるかもしれませんが、中にはくすっと笑えるユニークなものもあります。(^-^)

 

今回ご紹介する和歌は、まるで漫才みたいなユーモアあふれる和歌のやり取りです。

 

 

寺々の女餓鬼申さく大神(おほみわ)の男餓鬼賜(たは)りてその子生まはむ 池田朝臣
寺々の女餓鬼が申すには、大神の男餓鬼を賜りその子を産んでみたいということらしい

仏造る真朱(まそほ)足らずは水たまる池田の朝臣が鼻の上を掘れ 大神朝臣奥守
仏像を造るための真朱が足りないのなら、池田の鼻の上でも掘ればいい

 

男餓鬼みたいに痩せこけていた大神朝臣奥守を、池田朝臣が「女餓鬼が男餓鬼の子を産みたいんだってさ」とからかって詠んだ和歌。それに対して大神朝臣奥守は、池田朝臣を「赤鼻」とやり返しています。

 

「真朱」とは硫化水銀鉱物から採れる「朱」の顔料のことで、仏像の塗装にも用いられました。

 

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「鼻の上を掘れ」と詠われた和歌は他にもあります。

 

童ども草はな刈りそ 八穂蓼(やほたで)を 穂積が朝臣が 腋草を刈れ  平群朝臣
子供達。草を刈るのはもういいから、穂積朝臣のあの腋草を刈ってやれ

いづくにぞま朱掘る岡薦畳(こもたたみ)平群の朝臣が鼻の上を掘れ 穂積朝臣
どこあるのか 真朱(まそほ)のある岡は 平群朝臣の赤鼻の上を掘ってやれ

 

「腋草」とは主に腋毛のことを言いますが、腋臭という説もあります。平群朝臣に「脇草」のことをからかわれた穂積朝臣が、平群朝臣を「赤鼻」とやり返しているそんなやりとり。