節分の豆まきにけりこの冬をわれつつがなくすぎにけらしも
節分の豆まきをした。どうやら私は、この冬を無事に過ごすことができたようだなぁ。
「立春」の前日である節分は、「季節を分ける」という意味が含まれています。「無事に冬を乗り越え、新たな季節を迎える」という区切りの意味も込められており、冬の厳しさを乗り越えた安堵感だけではなく、節目を迎えた感慨がこの歌には込められています。そして「にけらしも」という詠嘆の表現には、「過ぎ去ったことを改めて思い返し、しみじみと実感する」ニュアンスがあり、この余韻のある表現が、ただ事実を述べるだけでなく、より感慨を深めています。
豆をまきながら、「今年もこうして節分を迎えられた」と実感する、「あぁ、今年も無事に・・・」という安堵の思いは、年齢を重ねるほど大きくなっていくもの。長く生きるほど、ひとつの季節を無事に越えられたことの意味は、より重みを増していきます。この歌もまたそれに比例するように、季節の移ろいとともに味わいを増していき、深く胸に沁みていくのだと思います。