「えっ、この量を1人でやるの?」と圧倒される経験は、社会人になってから何度もありました。しかし、何とか手を動かし続けていくと、あれだけ膨大に思えた仕事も少しずつ減っていき、いつの間にか終わっている。そんな経験を重ねるたび、「人間1人の力は微々たるものだ」と侮っていた自分の考えを見直さざるを得なくなりました。コツコツと積み上げる大切さを突きつけられ、その積み重ねが驚くような成果を生み出すことを何度も目の当たりにしてきました。
蟻もまた、一匹一匹は小さな存在ですが、集団で協力し、一歩一歩を確実に進めることで、最終的には自分たちの目的を達成します。蟻は、目の前の石に感情を持ち込むことなく、ただひたすらに目的地を目指します。小さな体で自分たちの何倍もの重さの餌を運び、巣を築き、集団を存続させる。彼らにとって、目の前にある「石」はただの通過点に過ぎません。どれほど大きな障害物に見えても、蟻は感情を挟むことなく淡々とそれを乗り越えていきます。それがどれほど大きな障害に見えたとしても、淡々と進む姿には不思議な強さがあります。
一方で、人間は蟻とは異なり、過去の失敗やトラウマ、自分の中の不安や迷いが「石」となり、それにつまづいてしまうことがあります。小さな障害を必要以上に大きなものとして感じてしまうのも、人間特有の側面かもしれません。
感情や思考の存在は人間性を豊かにしてくれますが、時には蟻のような「目的を果たすシンプルな強さ」を見習うことで不必要な不安や迷いから解放され、目の前の石をやすやすと乗り越えられることもあるかもしれません。とはいえ、ただ感情を無くして機械的に行動すればいいというものではないのは大前提であり、感情を持つことは人間らしさの本質でもあります。あくまでも必要以上に感情や思考に引きずられないしなやかさを持つことが大切という話です。