雨で濡れたワイシャツが透けて浮かび上がった青白い痩せた体と、猛禽類のような冷たく鋭い眼。そんな鮮烈なビジュアルで真っ先に思い浮かんだのは、TikTokなどで見かける、AIが生み出した絶世の美男・美女。透けるワイシャツや青白い痩軀といった儚さの中に、鋭く無機質な「禽の眼」が配置されていることで、どこか現実離れした美しさが際立ちます。
AI生成の美しさには現実の人間とは異なる神秘性と完璧さがあり、圧倒的な神々しさがあります。それが魅力である一方、どこか生命感が希薄であり、無機質な冷たさみたいなものも感じられます。掲出歌の「きみ」もまた、まるでAIによって生み出されたような、人間味のない美しさを持つ存在に映ります。その人間味の薄さからこそ、逆に「何を思っているんだろう」と、探りたくなるような気持ちが湧くのです。
特に「禽の眼」という表現が入ることで、現実感が一瞬にして消え、まるでMVのワンシーンのような幻想的で非現実的なイメージに転じます。リアルであるはずなのに、どこか異世界的な空気が漂う感じ、まさにAIが生み出す“完璧な美”に通じるものがあるような気がするのです。美しさと冷たさが混ざり合うからこそ、人間っぽくないのに目が離せない、そのアンバランスさが引きつけるのかもしれません。
作者の楠誓英氏は、阪神淡路大震災で実兄を亡くされており、現実味のない神秘性や神々しさは、実体のない兄の姿を投影しているからなのかもしれません。
ふと思いついて、 AIに掲出歌をイメージして画像を生成してもらってできあがったのが、上記のイラスト。まさに「雨で濡れたワイシャツが透けて浮かび上がった青白い痩せた体」と、「禽の眼」を思わせる冷たく鋭い視線が印象的で、歌のイメージにぴったり。
そして、もうひとつがこれ。
右手の位置がやや気になるものの、全体としてはより現実的な印象を与えます。